下地こそ塗装の命 ちいさな下地作業が大切な理由 |
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職場管理、見積もり担当の松尾です。 今回はちょっとした作業ではありますが、とても大切な下地の実例を3点ご紹介いたします。 どれもこれも、本当に小さなことではあるのですが、これらをやらないと後に大きな問題を引き起こす原因となります。
まず一つ目。塗装工事が終了した後に、タッチアップ(補修工事)でお伺いした実例です。 このお客様のお宅は、1回目の塗装の下地部分があまり良くない状態だったため、2回目の外壁塗装(付帯部)は弱溶剤の塗料を用いて、下地を溶かしながら密着するタイプのものを細心の注意を払いながら使用していました。 ところが、塗装工事完了後に始まったお隣の新築工事の際に、塗装した霧よけの上に粘着性の高いガムテープを貼られてしまい、ガムテープを剥がしたところ、塗料がはがれてしまったのだそうです。お客様から「自分でも塗れるとは思うのだけど、一度見てもらえないかしら」とご連絡を頂きました。
もともと、弊社では塗装完了後に「タッチアップ材」として、薬の小瓶程度の塗料をお渡ししてあるのですが、下地の問題もありましたのでお伺いさせて頂くことに。 すると、やはり旧塗膜が完全に密着していないところにガムテープを貼られため、2度塗りした塗料が旧塗膜からすべて剥がれていました。
このまま、お渡ししているタッチアップ用の塗料を使って頂いても良かったのですが、一度剥がれてしまったところは下地と塗料の密着率が弱くなってしまうので、今回は再度こちらで塗装させて頂きました。 塗装工事をしてから日数が少し経ってしまっているので、下地の密着率を上げるために、まずは紙やすりで軽く目荒らしをして、その後塗料で2度塗りを。 こうすることで、より塗料と下地の密着率が上がり、剥がれてしまった部分の強度も上がります。 たかだか小さな紙やすりで、うっすらと傷をつけるだけの工程ではあるのですが、この工程をすることで後から塗った塗料の密着率は大きく変わるのです。
弊社はいつでも、お客様にとってかかりつけ医のような塗装会社でありたいと思っています。 お客様が下地の状態を不安に思っていらっしゃるのであれば、それをしっかりと解消することが、かかりつけの塗装会社としての役目だと思うのです。
二つ目の実例は、コロニアル屋根のお宅です。 割れやすいとされる屋根に、前にブログでお話しましたパミール屋根がありますが、最近ではコロニアル屋根でもパミール屋根と同様の現象が起きています。 お客様の家も屋根の上を歩くだけで、まるでビスケットの上を歩くようにパリパリと割れる状態になっていました。 お客様がおっしゃるには、先だっての台風で屋根が剥がれてしまった…とのことだったのですが、見てみると剥がれた部分はもともと屋根自体がもろくなっていたようです。 通常パミール屋根やコロニアル屋根が割れるのは、屋根材を固定する釘の錆びていることが原因とされています。 釘が錆びてしまったがために、屋根材を支えられず、屋根材が割れたり滑落したりするのだと……。 でも、こちらのお客様宅築10年以上ではあるものの、写真を見て頂いてもお分かり頂けるように釘に錆はなく、当てはまりませんでした。 代表的な原因が、必ずしも当てはまるわけではないのです。
今回の原因は、屋根材を止める釘の打ち方でした。
お客様宅の屋根は、四角の板が3枚つづりになったものが1枚となっている細長い板状のコロニアル屋根だったのですが、屋根材を止める際に打った釘が、ちゃんと打てておらず出っ張ってしまっていました。 屋根材と屋根材の隙間には本来風なども入りこむのですが、屋根材の隙間を風が通る際に、この少しだけ出っ張った釘が屋根材の下でシーソーの支点のようになり、屋根材はカタカタと動く状態に。その結果、屋根材の真ん中に力がかかり、最後には、釘を軸にして屋根材が割れてしまっていたのです。
なぜ釘が出っ張ってしまったのかを、大工にも意見を聞いてみたのですが、経年劣化で釘が浮いてくることもあるので一概には言えないけれど、施工の仕方がまずかったのかもしれないとのことでした。
また現在では、屋根の釘を打つ際にエアーコンプレッサーの釘打ち機を使います。 推す力を間違えると、誤射してしまったり、うっかり2本打ってしまったりする場合も。 このミスを「ま、いっか」で済ませてしまうと、後にこうした不具合を引き起こす原因となります。 釘の出っ張りをその時にきちんと対処していれば、なんでもないことなのですが、対処せずにそのままにしてしまうと、屋根が割れてしまう原因になるのです。 たかが釘1本ですが、されど釘1本です。 こうした下地のちょっとした甘さが、屋根が割れるという惨事を引き起こしてしまいます。
最後三つ目にご紹介する実例は、タスペーサーです。 タスペーサーは大きさで言うと、1~2センチほどの小さな部品ですが、屋根の塗装をする上でとても重要な働きをします。
先ほどもお話しましたが、通常屋根材と屋根材の間には隙間があります。この隙間は屋根材と防水シートの隙間に入り込んだ雨水を、外に排出する仕組みにもなっています。 ところが屋根塗装をする際に、塗料の膜厚、重みで、屋根材と屋根材の隙間を塞いでしまうことがあるのです。 隙間を塞いだままにしてしまいますと、様々な箇所から屋根の下に入り込んだ水が、屋根材の内側に水がたまり、雨漏りの原因となります。(針穴、シートジョイントなどから) そうしたことを防ぐためにあるのが、「縁切り」という工程です。 塞がってしまった屋根材と屋根材の隙間を、お好み焼きのヘラのようなもので切り開け、水の排出口を確保します。 ただこの「縁切り」という作業は、1回目の屋根塗装の際にしかできません。 というのも2回目の屋根塗装の際に、塗り重ねた塗料の重さで屋根材の重量が増し、さらに塗り重ねた塗料で屋根材の厚みも増します。重量と厚みが増した屋根材は、屋根材と屋根材の隙間を圧迫します。その為、微妙に開いていた屋根材の隙間が塞がってしまうのです。 こうなってしまうと、「縁切り」をしても、隙間は押しつぶされてしまうため水の排出口を保つことはできません。 そんな時に、このちいさな部品であるタスペーサーが役に立つのです。 タスペーサーを入れることで、屋根材の隙間が保たれ、水を排出することが可能になります。 このタスペーサーもまた、屋根塗装に置いての大事な下地の一部なのです。
ただ、このタスペーサーの使い方は、お客様の屋根の状態によっては、1回目の塗装の際に使用する場合もあります。屋根の構造によって使い方が変わるからこそ、職人の感覚が必要になるのです。
屋根や壁の状態は、お客様の家の状況や施工会社、職人の腕によって状態は千差万別です。その時によって扱い方が変わる「生もの」のようなものと言えます。 職人が実際に屋根や壁を見て、屋根や壁の中を開けることで初めて、最適の塗装や補修を見極めることができるのです。
今回ご紹介したものは、どれもこれも小さな下地作業です。 塗料がうまくのるように、下地に目荒らしをしたり、釘をしっかりと打って出っ張らないようにしたり、屋根と屋根の隙間を開けるためにタスペーサーを挟みこんだり…。
小さな作業ではありますが、この下地作業の一つ一つが、大きなトラブルの原因を作らないためにとても大切なのです。
僕は普段、新しい塗料に飛びつくことはしません。 なぜなら、新しい塗料にはまだデータが無いからです。 お客様に塗料をご提案させて頂く際に、一番大事なことは塗料の長所と短所をお伝えすることだと僕は思います。 塗料には必ず長所と短所があります。 その長所と短所を塗料メーカーのデータや、現場で実際使ってみて把握することで、初めて塗料の性能を引き出すことができるのです。 ご紹介した3つの下地作業にも言えることですが、塗料や屋根材の長所と短所を知り、その短所を補うためにしっかりと下地作りをすることが、何十年も家を長持ちさせるための秘訣なのです。
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